0039 木質バイオマスで発電!グリーン・エネルギー研究所vol.1

2015.03.11

カテゴリー: 活動報告

1月28日発行の高知新聞に、「宿毛市で四国初の木質発電所が創業 森林資源活用に期待」と大きく取り上げられていたのを、みなさん覚えていらっしゃいますか?

この四国初の木質バイオマス専焼の発電所グリーン・エネルギー研究所は何を隠そう弊社・相愛のグループ企業。

グリーン・エネルギー研究所ボイラー棟。敷地内には木材が山積み。

 

更地だった宿毛工業団地の一角に設備・建家の建設を始めたのが昨年1月。

あれよあれよというまに建設が進み、なんと約1年で建設完了。

1月27日には竣工式も滞りなく行われ、冒頭のタイトルで高知新聞にも掲載されました。

相愛、そしてもうひとつのグループ企業エコデザイン研究所とともに循環型社会の構築に向けた新たな試みが、いよいよ本格稼働! です。

 

今回のお仕事紹介ブログは、この四国初の木質バイオマス専焼発電所の事業を余すところなくお伝えすべく、グリーン・エネルギー研究所取締役の永野正朗さんにお話を聞きに行ってまいりました!

 

-本日はよろしくお願いします。

永野:こちらこそ、よろしくお願いします。

 

-朝いちの掃除が日課なんですか?

永野:いや、今回は相愛さんの取材が入るということで、急遽掃除を…、というのは冗談で、昨晩風が強かったようでストックしておいた枝や葉っぱが敷地内に飛ばされていまして、掃除というより、ま、ホウキを使ってかき集めていたといったところです。

グリーン・エネルギー研究所取締役・永野正朗さん。

 

-今日初めて来て驚きました。本当に小枝や葉っぱが山積みされていますね。

 これは、もちろん発電の…。

永野:ええ、発電の原料です。うちの発電所で使われる木質バイオマス、つまり木材原料の基準ってわかりますか?

 

-いえ、基準までは把握していなかったのですが…。

永野:「燃えればなんでも」です。そこにこそ、この事業の意義があると言ってもいいでしょう。

今まで、山に捨てられてきた材木として使い物にならない曲がった木や、葉や枝、樹皮、それらすべてをここでは資源として役立てることができるのです。

これまで利用する術のなかった枝葉が山積み。

樹皮も山積み。

大きなものから小さなものまで。

敷地いっぱいに様々な種類の木材が積み上げられています。

 

■グリーン・エネルギー研究所の事業の概要

-なるほど、了解しました。では、あらためてグリーン・エネルギー研究所の 事業概要あたりから、今日はじっくりと教えてください。

永野:はい。じっくりやりましょう。事業内容としては大きく二つ。

木質バイオマスを原料とした発電事業と、木質ペレットの生産事業となります。

発電事業の方が、比重は大きいです。

 

発電の定格出力は6500kW。年間の計画発電量は4500万kWhとなります。

これは12000世帯分の電力量ですので、当地・宿毛市の世帯数の約1.2倍を見込める量となります。

 

-木質バイオマスだけで12000世帯分ですか。かなりの発電量ですね。

永野:今全国あちこちで木質バイオマス発電の計画が進行中ですが、だいたい平均的な規模です。宿毛市の人口を鑑みても、十分な発電量だと考えています。

敷地に集められた木はチッパーで細かく裁断されます。

裁断されたチップはマシン上部から噴出され、ストックヤードに。

こちらは破砕機。チッパーで細かくできない木をハンマーで叩くようにして潰すマシンです。

燃料炉への投入口。チップと潰した原料をまぜてこちらに投入していきます。

 

-設備としてアピールできる点はありますか?

永野:パンフレットの設備紹介には専門的な言葉が並びますが、ボイラーにコンビネーションストーカー炉を採用しているところです。

 

-強そうな印象ですね。

永野:え~、強い弱いは関係ないですね(笑)。

コンビネーションストーカー炉は、投入されたチップを炉内上部で乾燥させて、順々に下部に送り込み燃焼させる仕組みです。

通常は炉に投入する前に、チップを乾燥させる前工程が必要になるのですが、この炉の場合、同じ炉内で乾燥から燃焼まで行えます。

 

-どういうメリットがあるのでしょう?

永野:別乾燥だとエネルギー源が余計に必要になります。

木を乾燥させるエネルギー源として納入した木を燃やすのも非効率ですし、そこに石油・化石燃料を使うのはそもそも本末転倒。

この炉だと、そういう面が解消されます。

 

ただし燃やし始めのときは、炉内を温める必要がありますので、ここは木を燃やして温めています。一般に使われている助燃材(石油)は使用していません。

 

-手間がかかりそうですね。

永野:ひと手間かかりますが、燃焼時に化石燃料を使わないことを重視しています。

その他、生み出したエネルギーを極力使うために、チップを炉内に投入する際、排熱を利用した熱いエアーで飛ばすなど、ボイラーの燃焼効率を上げるための工夫を重ねています。

投入口からボイラー等へつながる燃料導入管が長~く伸びています。

コンビネーションストーカー炉を見守る永野さん。

この3つの管から原料のチップが炉内に投入されていきます。

炉内で燃え盛る炎!

工場マニアの方が喜びそうな無機質なフォルムのボイラー棟。

写真中央が炉、その左が機械式集塵機、さらに左が電気式集塵機という構造です。

2段構えで大気中への粉塵の拡散を防ぎます。

 

-理解しました。ペレットの方はいかがでしょうか?

永野:ペレットの生産能力は1時間あたり2.5トン。国内では1時間辺り0.5トン~1トン規模のものが多いので、国内有数の生産能力だと言えます。

 

-原料の木質バイオマスはどのようなものになりますか?

永野:針葉樹・杉、ヒノキ、松の丸太や製材工場からの端材など。

背板、鋸屑、おが屑も多く利用させてもらっています。

 

燃焼後灰になる率の少ないホワイトペレットを製造しているので、樹皮は分けて乾燥工程でのエネルギー源として活用しています。

木を丸々一本使い切ることをコンセプトとしています。

 

-お客様はどういう方になりますか?

永野:現状は、農家の方がほとんどです。農業ハウス用の加温ヒーター用にペレットを販売させていただいています。

その他、情報を聞きつけた地元の海産物メーカーさんからも声をかけていただき、取り引きを始めています。加工品製造時には、乾燥工程が必要になることが多いので、地域の加工品メーカーさんにもどんどん使っていただき、エネルギーの地産外消もアピールしていきたいですね。

ペレット製造棟の前に集められるペレット用の木材。

木材から作られるペレット原料用のおが粉。

異物の混入がないかチェックに余年がありません。

樹皮は、ペレット原料のおが粉を乾燥するための燃料として使われます。

ペレット製造マシン・ペレタイザー。1時間に2.5トンの製造能力を誇ります。

完成したペレットがどど~んとストックされる、ペレットサイロ。

袋詰め機。ここでフレコンバックに詰み込まれ出荷を待ちます。

完成したペレット。

 

■構想から立ち上げまで

-そもそもこの事業を行うにあたっての構想はどうやって生まれてきたのでしょうか?

永野:元々は相愛・永野正展会長の「枯れない油田」構想がベースになっています。

燃料を石油など地域外のものに依存するのではなく、地域内の森林を資源として管理・活用し、その再生産性を利用することで永続的な供給を生み出そうというアイデアです。地域の中でこの需給を回していけば、地域経済も活性化し、森林にも人の手が入り環境整備にもつながります。

 

-相愛の木質バイオマス事業もその一環ですね。

永野:そう。2008年には、芸西村のハウス農家さんへのペレットヒーターの導入が始まったのですが、その前年、芸西村と相愛と高知工科大の3者で、この導入に向けての研究プロジェクトが始まりました。私も工科大の研究員として、このプロジェクトに携わりました。

ここのあたりが、私と木質バイオマスの関わりのスタートです。

芸西村への導入が成功した後は、現グリーン・エネルギー研究所社長の

那須教授の研究室に入り、この理念・構想を社会に実装させていくために活動を続けてきました。

芸西村・籠谷さんの花卉栽培ハウスで活躍する相愛のペレットヒーター「木燃(もくねん)」。

芸西村の木質ペレットヒーター使用ハウスには、視察者が後を絶ちません。

 

-なるほど。ペレット燃料としての木材活用ですね。

永野:そうです。さらに、2012年には再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称FIT)ができました。ここで木質バイオマスによる発電事業が視野に入ってきました。

ペレット原料としても使えなかった、枝葉なども活用できます。

ペレット生産単体では事業化が難しい状態でしたが、FITを使った発電と組み合わせることにより、事業の展望が開けてきたのです。

 

2013年には紆余曲折ありましたが、敷地を当地・宿毛に決め、いよいよ具体的な事業化に乗り出します。2014年1月に起工式を行い2月に建設スタート。

それから1年未満の早さで建設完了。2015年1月27日には無事竣工式を終えました。

私も、もう数年前から木質バイオマス1本の人生になっていますね(笑)。

 

-ご苦労なさった点は?

永野:そうですね、発電にしてもペレット生産にしても、当初はとにかく素人でしたので、スペシャリストを探しスカウトするまではハラハラしてましたね。

そんな中お会いできたのが、現・発電所の平尾所長と和田副所長。

それぞれ電気、ボイラー・タービンのプロ中のプロです。

この2人がうちの理念・構想に意義を感じて入社してもらってからは、もうその分野に関しては大船に乗ったような状態で、まかせています。

 

原料の調達に関しては、地域で以前から林業に携わっていた方など3名が担当しています。このあたりの山のことをよく知っているし、林業家さんたちともじっくりと関係性を作ってくれていて、頼もしい存在です。

ちなみに現在、地域雇用も含め現在29名の従業員がおりますが、それぞれの分野でどんどんスペシャリストが育っています。

ひところに比べたらだいぶ安心できるようになりました。

木材の調達や問い合わせ対応を行う事務所棟。

優しい木の香りに包まれた居心地のいいオフィスです。

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