0037 地産地消の循環型エネルギー・小水力発電現地踏査

2015.01.14

カテゴリー: 活動報告

昔々バブル全盛期の80年代、「あけおめ、ことよろ!」なる新年のご挨拶が一般化しておりましたが、今のヤング世代も使っているんでしょうか? 

ということが気になる2015年新春。

相愛ブログ、今年もよろしくお願いします~。

 

新年一発目の当ブログは、前述のバブル期とはある意味真逆の取り組み持続可能な循環型エネルギー・小水力発電所がテーマとなります。

安芸市畑山地域の小水力発電開発検討地に現地踏査に行ってまいりました。

昭和48年まで発電を行っていた畑山水力発電所建屋。

その右を流れ落ち安芸川に注ぎ込む岩井谷川。この小さな流れを利用して発電を行います。

 

小水力発電とは、出力何十万kwにものぼる大規模な水力発電ダムを利用したものではなく、農業用水路や河川の中上流域の水を利用した発電システムのこと。

明確な定義はありませんが、一般的に出力1000kw以下のものを指します。

 

高知でこの小水力発電所の普及に向けて東奔西走されているのが、地域小水力発電株式会社の皆様。今回の設置を検討している畑山小水力発電所では、最大出力49kw、年間出力30万kwh(95世帯分の年間使用料)の電力供給を予定しております。

現場に至る吊り橋、やばそうな雰囲気なので、一人ずつ行きます。

旧畑山発電所建屋近景。大正12年に建てられた歴史的建造物です。

以前は、この発電所が安芸市一体に電力を供給していました。

内部の写真はちょっと怖いので、今回はパスしておきます。

 

今回の小水力発電は、この旧畑山発電所の水路を一部手本にして岩井谷川上流部から水をひこうという試み。発電を行う水車発電機は、この建屋横の敷地に設置を予定しています。

さあここから取水口まで渓流沿いに山を上り、導水パイプ設置場所の現地踏査開始!

 ●畑山小水力発電所全体概念図

高低差90m、導水距離580mの半獣道を登りますよ~。

 

相愛では今回この地図一帯を踏査確認した後、現場全体の平面測量、導水ルート全域の縦断測量、さらに建造物設置予定地等必要箇所の横断測量および動的コーン貫入試験を行います。

まず現れたのが、旧導水管。旧発電所では3箇所から水を集め、最後のこの斜面を直角に落下させ、発電を行っていました。高低差60m。

このはしごのような階段が足にきます。

底のない橋をわたって導水管をまたぎます。

この導水管の少し奥に新しく導水パイプを設置する予定。かなりの急斜面です。

検討した地点に目印をつける弊社技術士・村岡。

獣道というか斜面をひたすら奥に進みます。

何者かがお食事をした後がありました。鳥の羽がそこいらに。やはり獣道!

激しく崩落した地点に差し掛かりました。

先頭を行く地域小水力発電株式会社の千光士さんと、藤島さん。ルート確認中。

倒木にしがみつきながら、崩落地点を進みます。

さてどのようにパイプを這わすか。念入りに検討を重ねます。

この地点では、地形の詳細を把握するための横断測量と、地盤の状態を探るため動的コーン貫入試験及を行うことになりました。

さらに奥に進むと旧水路の枡がありました。混入した不純物などをここで取り除いていた様子です。

こちらは排水口。この割れた部分に差し込まれた板で洪水時の水量調節などを行っていた模様です。

細部をチェックする弊社地質調査技師・西村。

このあたりは石積みが築かれ地盤が安定しています。

導水パイプはこの道の上を這わす計画です。

旧取水堰に到着。石積みのきれいな歴史的建造物です。

新しく作る取水堰はここからさらに約150m上流を予定しています。

旧取水堰のすぐ上に、大きな土砂崩落箇所がありました。

再度の崩壊する可能性があるため、導水パイプをどのように這わすのか、崩落を防ぐ手立ても含めて検討を重ねます。

 

今回相愛に依頼されているのは測量と地質調査ではありますが、最終的にどのような完成形がベストなのかをイメージして業務に当たることがとても重要なのです。

さらなる山登りの開始。

道なき道を進みます。

再び大きな土砂崩落箇所に遭遇。山の遥か上部から流れ落ち、土砂の道ができています。

この部分は平地が開けているので、崩落箇所を避けて軌道を確保する予定にしました。

表面にトゲトゲがびっしりの木。未熟な人間の侵入を阻止します。

岩陰にひっそりと佇む岩井谷川起点の標。ここが2級河川としての起点になります。

ここから上流は同じ岩井谷川でも普通河川として分類されています。

取水予定地はあと少し、現場の記録を残しつつ渓流沿いに足を進めます。

にしても、この大きな石は洪水時に流れてきたのでしょうか。

改めて水の持つエネルギーの凄さを感じます。

取水予定地に到着しました。ここに堰を作り、流れの一部を発電用に導水します。

畑山小水量発電取水予定地全景。循環型エネルギーの源です。

お猿さんのようにそこいらに腰掛け、沈砂池の算段をつける面々。ちょっと一息。

 

沈砂池は読んで字のごとく、取水した水に含まれる砂分を沈める装置。

 コンクリートの小さなプールを設置します。

沈砂池予定地、取水口からすぐの地点ですが少し高めの場所なので、1.5mほど地面を堀り、設置する計画を検討しました。

前述しましたが、こういう構造物を作る予定地はすべて横断測量と動的コーン貫入試験を行います。

帰りももちろん獣道。

要所要所に目印をつけつつ下ります。

 

帰りがてら地域小水力発電株式会社の藤島さんにお話をお伺いしました。

 

「うちの会社は3.11の原発事故をきっかけに、再生エネルギーと地域おこしを絡めた活動ができないかと考えてスタートしました。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)ができたことにも後押しされました。

 

日本の中山間地の地域おこしと考え、小水力発電に行き着きました。

FITではこの規模の発電でしたら1kwあたり34円で20年間の買取が保証されています。1年間1000万程度の売り上げが見込めます。

畑山地区でもこの制度を活かし、地域の皆さんと一緒に会社を設立して小水力発電所を運営していくことを計画しています」。

自慢の健脚で崩壊箇所を俊敏にクリアする藤島さん(先頭)。

 

「現在、県内では馬路村の小水力発電所を立ち上げています。

その他ここ畑山と、高知市土佐山の高川、四万十町の野々川に同規模の小水力発電所を作る計画になっています。

 

県外では、四国はもちろん関西方面・兵庫、滋賀あたりでも立ち上げ計画が進行中です。循環型エネルギーの輪を全国規模でどんどん広げていきたいと思っています」。

 

藤島さんと千光士さんのあたたかいキャラクターも相まって、小さな地域の小さな発電所があちこちに作られ、エコロジカルな輪が全国にどんどん広がっていくイメージが沸いてきました。

 

引き続き帰路の様子

現在では獣道ですが、元々は旧発電所用の水路設置のため作られた道。

この岩盤をえぐって道を開通させています。今と違って道具のない大正時代、たいへんな土木工事だったと思われます。

最終的に水を落下させる地点に帰ってきました。

ここから真下に60mの直線ルートを引きます。

自身が崩落しないように気をつけつつ、直線ルート降りてくる村岡。

発電に利用した水は、発電所下の流れに戻され、自然の循環の中に帰っていきます。

 

これから全国各地に小水力発電所を立ち上げ、中山間地など過疎化地域の地域振興に役立てたいと語る藤島さん。

将来的には、小水力発電地域のネットワークを作りを行い、人的交流の他に、互助会や基金作りなども行っていきたいと語ります。

「循環型自然エネルギーで地方を元気に!」 

これが、地域小水力発電株式会社の大きな目標。

素敵な取り組みですね。

 

グループ企業に、木質バイオマスを利用した発電を試みる株式会社グリーンエネルギー研究所を持ち、循環型社会の構築を目指す相愛としても、地域小水力発電株式会社様の取り組みに、今後も注目していきたいと思います!

ハードな山登り&下り。みなさんお疲れ様でした!

 

おまけ

畑山地区に一軒だけある温泉旅館「はたやま憩いの家」。

お昼はここでいただきました。土佐ジローの親子丼が最高! 写真撮り忘れてゴメン!