0112 木質バイオマス事業課のお仕事紹介
暦の上では春ですが、まだまだ寒い日が続いております。
今回のお仕事紹介ブログは、そんな寒い時期に活躍する木質バイオマス事業課のお仕事についてご紹介します。
寒くなると使うものと言えば、暖房。
当課では、冬に欠かせない暖房機と燃料を取り扱っていますが、ただの暖房機と燃料ではございません。
木材を原料とする「木質ペレット」を燃料とした、施設加温用の小型暖房機です。
と、言われてもなんのこっちゃ?
ですね、私も最初はそうでした。
事業課名でもある木質バイオマス、一般的に聞き馴染みのない言葉ですが、そもそも、木質バイオマスとはなんぞや?というところから、木質バイオマス事業課のお仕事紹介を始めていきましょう。
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、一般的には「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼びます。
最近では、菅首相が昨年10月26日 の所信表明演説で、2050 年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロへ、そして日本の地球温暖化対策計画では2030 年度までに26%削減の中期目標を掲げており、再生可能エネルギーという言葉をニュースでもよく耳にするようになったと思いますが、バイオマスも再生可能エネルギーの1 つに含まれます。
バイオマスの種類には①廃棄物系バイオマス、②未利用バイオマス、③資源作物(エネルギーや製品の製造を目的に栽培される植物)があります。
当課が主に取り扱うバイオマスは林産資源(製材工場残材、林地残材)に該当します。
林産資源=木材、つまり木質バイオマスです。
木質バイオマスの種類は大きく、薪・木質チップ・木質ペレットと分かれます。
薪は古くから利用されてきた木質バイオマス
木質チップは端材、間伐材、建築廃材などを切削・破砕し木片にしたもの
そして、当課で取り扱うのは木質ペレットです。
木質ペレットの原料は、森林の育成過程で生じる間伐材や、製材工場などから発生する樹皮、のこ屑(プレーナー屑)、端材などを乾燥し細かく砕いたもので、これを円筒状に圧縮・成型したものが木質ペレットです。
では、この木質ペレットをどのように使用しているのか?
冒頭で述べたように暖房機の燃料として使用しています。
一般的に、木質ペレットには品質規格があり、直径は6~12 ㎜、長さは10~30 ㎜、体積重量はおよそ650~750kg/m3、高位発熱量は4,300~4,800kcal/kg(A 重油の半分程度の熱量)となり、小さな粒でも燃やすと熱量は大きいのが特長です。
そして木質ペレットは、もともと大気中のCO2 を森林が成長する過程で取り込んだものであるため、燃料として使用しても大気中のCO2 の増減には影響を与えない、環境に優しい燃料と言われています。
それでは、次に木質ペレットを燃やす施設加温用の小型暖房機を見ていきましょう。
この暖房機の開発・製造の始まりには、子どもたちに誇りをもって引き継いでいける農業を目指したい農家の方々と、当社の高知県の森林資源を基軸とした新しい地域づくりへの熱い思いがありました。
時は平成18 年2 月、施設園芸の発祥地・高知県東部に位置する芸西村からの相談でした。
その内容は、将来、化石燃料の枯渇や、原油価格の高騰を危惧し、環境にやさしい農業の研究と同時に、化石燃料から木質バイオマス燃料に転換することで、地域における温室効果ガスの排出を削減し、地球温暖化防止に寄与する施設園芸を実践できないか、というものでした。
同年度、林野庁事業「森業・山業創出支援総合対策事業」に参加し、NPO法人高知社会基盤システム研究センター・芸西村・(株)相愛が、従来施設園芸で使用される重油を燃料とする暖房機に代わる木質バイオマスを燃料とした暖房機の開発と、すべての森林をエネルギーにするのではなく、自然成長力の範囲内でのエネルギー利用を前提とし、間伐材や林地残材の利活用で林業との共存共栄を図りながら、木質エネルギーの安定供給を可能とする持続的なシステムの構築について考察します。
そして、木質チップによる加温実証がスタートしました。
平成19 年度には、単位体積当りの保有熱量(エネルギー密度)の高さから貯蔵・運搬で有利であること、燃料の形状・性質が安定していること、加温機の小型化・低価格化が可能であるという理由により、木質チップから木質ペレットに変更します。
そして、同年度から試作機を導入して、ハウス加温と作物(ピーマン)栽培の適用実証実験が行われ、翌年、木質ペレット焚きヒーティングバーナー「木燃(MOK-NEN)」が完成しました。
この製品は、販売を開始した平成20 年度の高知県地場産業賞受賞と高知エコ産業大賞受賞をダブル受賞し、平成23 年度には全国規模のエコプロダクツ大賞で特別賞を受賞しました。
また、この製品を導入した施設園芸農家であるお客様たちの取り組みが、全国地球温暖化防止活動推進センター実施の『ストップ温暖化「一村一品」大作戦全国大会2009』において、銀賞を受賞しています。
1 個30g のピーマンで80g のCO2 削減に貢献!
当社の暖房機は、現行の木質ペレットヒーティングシステム「木燃(MOK-NEN)」も含め、これまで県内外で200 台以上導入し、当課が供給する木質ペレットも高知県内だけで年間2,000t 以上に上ります。
さて、木質バイオマスがどういうものかお分かりいただけたところで、木質バイオマス事業課の重要な業務を2つ紹介していきましょう。
まず1 つは、木質ペレットの運搬・投入です。
木質ペレットは製造工場から袋詰めされた状態で運ばれ、倉庫に保管されます。お客様の多くは施設園芸農家なので、倉庫からお客様のハウスへと木質ペレットをユニック車に積んで運搬します。
木質ペレットを保管している倉庫
倉庫に保管している木質ペレット
木質ペレットの運搬・投入は、残量検知システム【0105 高知発「IoT木質ペレット残量検知システム」!県内約70箇所で実運用中】をもとに予定を立てて行ないます。
お客様のハウスへと到着したら、木質ペレットを貯蔵するタンクにユニック車を横付けし、積んでいる木質ペレットをタンク内に投入します。厳寒期はハウス内の加温が必要不可欠で、日に30t 前後の木質ペレットを運搬・投入するため、素早く且つ安全で丁寧な作業が求められます。
農道なので、農作業に行き交う車のお邪魔をしないように運搬・投入します
お客様のタンクに木質ペレットを投入
もう1 つは、木質ペレットヒーティングシステム「木燃(MOK-NEN)」に係るメンテナンスです。
メンテナンスは加温シーズン前(9~11 月)とシーズン後(4~5 月)の定期メンテナンス、そして加温シーズン中のトラブルメンテナンスと大きく2 つに分けられます。
加温シーズン前とシーズン終わりの定期メンテナンスは、暖房機(木質ペレットヒーティングシステム)の寿命をより長く、より効率的で安全にお使いいただくための点検作業を行います。暖房機に破損や異常がないか、正常に運転するか、運転時の各設定値は最適か、消耗部品の交換、落雷対策、清掃、軽微な修理といった内容を項目に沿って点検し、お客様の暖房機ごとの点検整備記録簿を作成します。
点検作業には1台あたり1~2 時間を要します
消耗による耐火レンガの欠損
木質ペレット搬送管の経年劣化による破損
このように、暖房機本体だけでなく木質ペレット燃料タンクから搬送経路に至るまで、隈なく確認します。
加温シーズン中のトラブルメンテナンスは、暖房機に何らかの異常が発生して運転が停止した際に、お客様のハウスに伺い、原因を究明し点検・調整の上最適に運転できる状態にします。
暖房機の異常はお客様からのお電話と、メンテナンス担当者のスマートフォンへの自動通知【0107 「IoT異常検知」。木質ペレットヒーティングシステムの設備異常にいち早く対応!】で把握し、迅速に対応しています。
定期メンテナンス同様、こちらもメンテナンス記録簿を作成し、トラブルの内容や発生傾向の分析、集計を行います。このように蓄積された情報は、トラブルの低減や交換部品の推奨に活用しています。
また、暖房機は土日祝日関係なく、冬季の加温シーズン中は毎日運転しているため、土日祝日でもトラブル対応ができるように、当課ではシフト体制を組んで対応にあたっています。
以上が、木質バイオマス事業課のお仕事紹介となりますが、いかがでしたでしょうか。
私自身、入社するまで木質バイオマスについて全く知りませんでしたが、木質バイオマスを通じて、農林業が抱える課題を知り、いかに解決していくかを考えるようになりました。
高知県の森林面積は592,146ha で県土の約84%を占めていますが、この森林資源をまだまだ活用しきれていません。高知県だけではないですが、そもそも、戦後に広葉樹を伐って杉やヒノキを植林したものの、その後、外国材の輸入で国産材の価格が暴落し、採算が合わないために手入れを放置されてしまった山がいたるところにあります。そのまま放置し続けると、木々は生い茂り、光の入らない真っ暗な林となり、下草も生えず、雨が降ると表面の土が流され、ひどい場合には根が浮き上がって土砂崩れが起きることもあります。
木質バイオマスを使用することで、温室効果ガス排出抑制への寄与だけでなく、県外に流れていた化石燃料の購入資金が、高知県内の森林に回るようになります。それにより定期的な森林整備が行われ、健全な山へと生まれ変わります。
森林は生物を育み、水資源を保ち、人々の暮らしと密接に関わっています。これからも私たちは木質ペレット・木質ペレットヒーティングシステム「木燃(MOK-NEN)」をツールとした持続可能な循環型社会の形成、エネルギーの地産地消を進めていきたいと思います。
さて、最後に木質バイオマス事業課からお知らせがあります。
現在、当課では私たちと一緒に働いてくださる仲間を募集しております。
循環型社会の形成やエネルギーの地産地消に興味がある方、機械に興味のある方、お客様とのお話が好きな方、現場で活躍したい方、体力に自信のある方、高知の森林を愛する方、未経験でも大丈夫です。
私たちと一緒に、森林資源を基軸とした循環型社会システムを作っていきましょう。
まずはお気軽にお問い合わせください。