0009土質試験のお仕事

2013.08.03

カテゴリー: 活動報告
タグ: 地質調査

県内に地質調査業社は数あれど、土質試験室を持っている会社はそう多くありません。
我が相愛は、土質試験室を運営している数少ない業者のひとつです。えっへん。

 

今回は建設工事の基礎の基礎を担う、土質試験室のお仕事をレポートいたします。

相愛敷地内の奥まったところに鎮座する土質試験室建屋。
夏休み期間なので、おばあちゃんの家に来たかのような錯覚が…。

鶏のエサやり場がありました。めじろがよく来るのだそうです。

へびの抜け殻がありました。玄関わきで見事に脱皮されたもようです。

土質試験室内部。入るまではいったい何の施設なの? って感じですが、中は様々な機器をそろえた、まさに試験室な面持ち。

 

さて、土質試験室と聞いても何の事だかわからないと思いますので説明しますと、道路や橋などのインフラ設備を建設する際には、そこの土壌がその建設物に対して十分な強度・耐久性を持っているかを計る必要があります。
また、土を盛って造成する場合などはその盛土が適したものかどうかを計る必要が出てきます。

 

それら建設物の基礎の基礎(土)を各種試験によって計測し土の状態、土の分類、強度、耐久性などを分析するのが土質試験室。
建設工事の縁の下の力持ちといえる存在なのです。

 

相愛の土質試験室では、自社が請け負う地質調査業務・建設設計業務から発生した土壌の試験を行うだけでなく、他社からの依頼による、土壌や盛土の試験もさせていただいております。

硬い話が続くのでコクワガタで一休み。試験室の裏山で取れたのを飼ってます。

 

試験内容にはいろいろありますが、その基礎となるのが、「土の物理試験」と呼ばれるもの。

 

いわゆる「土」と言われるものには、土粒子(個体)、水(液体)、空気(気体)が含まれており、その割合の差により、どろどろの土であったり、カチカチの土であったりという状態が生まれます。

 

で、その土を地盤や盛土に利用するには、それぞれの質量や体積などを試験により計測し、土の状態をトータルに把握する必要がでてきます。

 

さらに、「土」は、粒子の大きによって礫(れき)、砂、粘土などに分類されるのですが、実際の地盤や盛土には、これらが混然一体となって含まれています。

 

こちらもその配合割合により、硬さ、もろさ、水の通しやすさなど性質が変わってきますので、精緻な分類を行う必要があります。

 

このように「土」の状態や分類などの物理的性質を、試験によって確認するのが「土の物理試験」。
具体的には、土粒子の密度試験、土の含水比試験、土の粒度試験、土の液性限界・塑性限界試験などの試験方法があります。

 

みなさんついてきてますか~!

●土粒子の密度試験セッティング中。土の気体分を取り去り、土粒子(個体部分)の密度を計ります。

●土の含水比試験。試料(試験するサンプル)を12時間かけて乾燥させた状態。
最初の重さと乾いた時の重さの差で含水比を計ります。

 

続いて、土の液性限界・塑性限界試験。
土は含まれる水分量によって、どろどろの状態からやわらかい状態かたまった状態とさまざまに変化します。
専門的には、液体~塑性体~半固体と分類されます。
このそれぞれの境目の数値を計ります。

●土の液性限界試験。土が塑性体から液体に代わる限界点の数値を計ります。
水分を含ませて練った土を器具の上に乗せ、取っ手をカチカチ回して、1.5㎝ひっついたところが液性限界。

●土の塑性限界試験。こちらは土が塑性体から半個体に代わる限界点の数値を計ります。
練った土をガラス板に転がして直径3mmにして切れたところが塑性限界。

 

液性限界と塑性限界の試験で得た数値を計算して塑性指数を算出。
これが土の液状化現象の判断材料となります。
東日本大震災の影響もあり、最近はこの液状化関連の試験が増えています。

 

上記試験を一連の流れの中でこなしていく試験室のスタッフ。
途中で土と水を慣らすために時間をおいたり、土を乾燥させるために時間がかかる工程があるので、その合間を縫って、次々と試験をこなしていきます。

 

「土の物理試験」の中でも、この日じっくり見られたのが土の粒度試験。
試料の土に含まれる礫、砂、粘土を試験により分類し、重さや割合などを計測します。
粒度試験には、ふるい分析と沈降分析試験の2つのタイプがあります。

 

まずは
●土の粒度試験・ふるい分析

ふるい器。左上が75㎜の網の目、どんどん詰まっていって一番小さいのが2㎜。
ここまでが「礫」の分類。

さらに網目が小さくなり、左上が0.85㎜。
一番最後が0.075㎜。ここまでが「砂」の分類。
ここから下は「シルト」、「粘土」という分類になります。

こんなかんじでふるって分類していきます。

こういう石ころの群れが

これと、

これに分類されました。

続いて
●土の粒度試験・沈降分析。

試料の土を容器に入れて水に浸します。
12時間寝かせて、大きなビーカーに移し替えて水を加え…

人力撹拌! 2人でそれぞれ時間を読みながらテンポよくシェイクしていきます。

浮を投入。1分、2分、5分、15分…1440分(24時間)ごとの浮の沈み具合を計測していきます。

粒の小さいものが多いと浮の沈みが遅くなります。
0.75㎜以下のシルトや粘土はこの沈降分析で値を求めます。

この粒度試験で、試料の土がどのような土粒子で構成されているのか、それぞれの重量、パーセンテージが把握できるのです。

ちょっと一服。持ち込まれた試料から、こんな貝殻が発見されることもあります。

 

いかがでしたか、「土の物理試験」。

興味のあるお子様は夏休みの自由研究にでも、ぜひトライしてみてください。
実際ふるい分析なんかはできるかもですね。
みんなで庭の土を分類してみよう!

 

さて、土質試験にはその他、土の強度などを計る「土の力学試験」と化学的性質を計る「土の化学試験」というものがありまして、相愛ではそれらすべての試験を行っております。

 

土の粒度試験の他、この日じっくりと見られたのが「土の力学試験」のひとつ
●土の三軸圧縮試験。

高知県下に数台しかないと言われる三軸圧縮試験機。相愛にあり。

 

今回試験用に持ち込まれたのは、道路の地盤に使われる予定の盛土。
この土の強度を三軸圧縮試験により求めていきます。

土の強度を計る試験には一軸圧縮試験と三軸圧縮試験があり、違いは、一軸が試料の土をそのまま器に乗せて、上と下から圧をかけて計るのに対し、三軸では試料を円筒形の薄い膜に入れ、横から水圧をかけた状態で上下の圧をかけて計測します。

 

粘土分が多く粘着性のある土は一軸で、砂・礫など粘着しない土は上下の圧だけで壊れないよう、三軸で試験を行います。

円筒形の容器には水が満ち、さらにその中の茶色い膜の中に試料が入っています。

360℃ぐるっとかかっている水圧と、上下の圧で3軸。
水圧を3パターン変えた試料に、最後の一軸の圧をかけてそれぞれを計測。
数値を求めていきます。

セッティングは慎重に慎重を期して。

圧縮量が規定の数値になるたび、荷重と堆積変化を記入。
読み違えのないよう、目線はメモリの高さにキープ!
最終計測まで1本2時間30分適度かかります。

試験の終わった試料。それぞれ水圧の違いから形状が若干違っています。

 

スタッフの坂本によると、この日の土は粘着力が少なく強度の強い性質だった模様です。

 

ふ~。さて、何人の方がここまで読み通していただけたでしょうか?
内容的にどうしても専門的になってしまいますが、どの試験も、我々のインフラを支える建築物の地盤・盛土にとって非常に重要な内容。

 

弊社・相愛土質試験室の「縁の下の力持ち」な作業をこれからも応援のほど、何卒よろしくお願いします!

土質試験室スタッフの坂本(右)と竹内。

 

「この仕事を始めてから、そこら辺の石ころの名前がわかることに面白みを覚えました。

自分が試験した地盤の上にきれいな橋や道がついているのを見ると、やっぱりうれしいですね」。

土質試験室の試験一覧は、「室内土質試験」の欄をご覧ください。