0008 南海トラフ地震に備えて、手押しポンプ井戸のメンテナンス
ちょっと前のことですが2006年、相愛は創立50周年を迎えました。
その時、これまでお世話になってきた高知県に相愛らしい事業で何かお返しがしたい、という話が持ち上がりました。
創立50周年を記念して撮影した一枚。みんなちょっと若い。
社内からはさまざまなアイデアが出されあっちこっちの社内会議で喧々諤々。
あ~でもない、こ~でもないという話が、普段の仕事とは違って、ちょっと楽しく取り交わされました。
そんな中、そろそろ案を決めて動き出さないと50周年を越えちゃうよ~、という時期・2005年春の取締役会にて一つの案が出されました。
「南海大地震他、災害に備えて生活用水を確保する井戸を掘ってみてはどうでしょう? 50周年にちなんで50本」案を出したのは、2004年に社長に就任したばかりの永野敬典。
相愛入社前に勤務した会社が海外での井戸掘り事業を行っていたことからひらめいたといいます。
地質調査や水資源調査など、相愛がこの50年間で培ってきた技術を発揮でき、地域の皆様にも役立つ事業。
まさにうってつけではないかという話になり、50周年記念事業は、災害時用手押しポンプ井戸の設置に決定しました。
井戸を「掘る」「50本」から付けられた名前は「ホルゼ50」。
ジャン!
このような手押しポンプ井戸を県内50か所に設置させていただきました。
当初、人力による打ち込みで掘れると思っていた作業が、実はボーリングによる機械掘りが必要だったりして経費が膨らみ大変なこともありましたが、2007年までに作業は無事終了。
50本の井戸を設置し高知県下各地域に無償で贈呈させていただきました。
設置場所としては災害時の避難場所に指定されている学校施設がほとんど。
皆さんには大変喜んでいただきました。
学校によっては全校生徒を対象に「井戸の授業」を設けてくださったり、お礼のお手紙とお花を届けてくださったり、相愛本社の水循環システムを見学にこられた学校もありました。
メディアにもたくさん掲載していただきずいぶんと話題になりました。
初月小学校では地下水・井戸の仕組みについてみんなで学びました。
そんな話も今は昔と忘れかけていたころ。
2011年3月11日。
関東・東北地方を、我々の想像を超えた地震が襲い、さらに想像をはるかに超えた津波が襲いました。
東日本大震災後、相愛ではホルゼ50で掘った手押しポンプ井戸の状況をチェックして回りました。
すると、なんと9割近い手押しポンプに不備が発生し、地下水は流れ続けているものの、水のくみ上げが不可能な状態になっていました。
手押しポンプの取っ手が壊されていたもの、井戸の中に砂利を詰められ使用不能になっていたもの、それからピストンの役割を果たす木玉が収縮・破損しているものが40か所もありました。
木玉はポンプを定期的に使い続けないと乾燥して収縮し、ピストンの真空状態が保てなくなるのです。
おかしいな~水が出ないな~、とポンプをはずすと、小石がてんこ盛り。
その後、設置された学校・施設でも災害用備品のチェックが始まり、使用できなくなった井戸の補修依頼が、相愛に入るようになりました。
さて前置きが長くなりましたが、今回の現場は上記ホルゼ50で設置した井戸の補修依頼です。
土佐市高岡中学校の手押しポンプ井戸の修理に行ってきました。
高岡中学校。青春のグラウンド上空には晴れやかな青空が。
高岡中学校の手押しポンプ井戸は2か所。
いずれも災害時の避難場所に設定されている体育館の脇と校舎の脇にあります。まずは体育館脇の井戸から取り掛かりました。
施工前。ここの手押しポンプも取っ手が折れ、中に砂利が詰まっていました。
今回の補修は、手押しポンプそのものを新しいタイプに変更し、設置していきます。
まずは壊れた手押しポンプを外し、水位計による地下水の状態確認から開始。
水資源調査の基本は下向き!
第3回目の「水資源調査というお仕事」でも登場した水位計で測定。
水位は地下4.36m、井戸の底は地下8m。豊富な地下水が流れています。
ポンプで水をくみだして、井戸の孔内を洗浄していきます。
簡易濁度計で計った最初の濁度は944。真茶色です。
井戸の取水口周辺に積もった堆積物や、管内部のサビが出てきている模様。
10分ほど連続でくみ上げ、簡易濁度計で0になりました。
きれいな水が流れ始めました。念のため30分程度くみ上げ続け、濁度を計り続けます。
最後にサンプルを採取して専門の機関に持ち込み、詳細な水質検査を行います。
続いて登場するのが、ステンレス製手押しポンプ。
その名も「DRAGON(ドラゴン)」!
水がじゃんじゃん湧いてきそうです。
ドラゴンです。これで、砂利を詰められたり、木玉が破損したりといった問題が解消されます。
設置後、手押しポンプで水をくみ上げると、また濁り水が!
手押しポンプの方が瞬間的な吸引力が強いため、機械ポンプではくみ上げられなかった取水口周辺の堆積物や、サビなどがくみ上がってくるのです。
こちらも5分ほどくみ上げを行い、簡易濁度0に。
さらに約1時間くみ上げ作業を連続して行い、目視により不純物などが出ないことを確認。
水質を安定させました。
約一時間この状態をリピート アンド リピート アゲイン。
でもこの手押しポンプは古いタイプのものに比べて力が要りません。
大人なら片手で十分。子どもでも作業がずいぶん楽になりました。
不純物などを最終確認し、再度サンプルを容器に詰めて水質検査に回します。
プレートもピカピカになりました。
NEW手押しポンプドラゴン、設置完了!
これまでの鋳物の手押しポンプに比べて耐久年数は伸びたものの、新しいポンプでも日常的に使用していないと、使い始めが濁り水になる場合があります。
学校・施設関係者および周辺住民の方には、設置場所の確認も含め、日常的に使用して手押しポンプ井戸になじんでおいてもらいたいですね。
今回の補修について、教頭先生にお話をお伺いしました。
高知県土佐市立高岡中学校・岡村洋一郎教頭
うちの学校では2か所、地域の災害時避難場所に指定されている体育館の脇と校舎の脇に設置していただいているのですが、東日本大震災の後、いろいろな設備・道具をチェックしているなかで、手押しポンプが2か所とも壊れていて機能しないことがわかりました。
教育委員会を通して修理をお願いし、今回相愛さんに直していただけてありがたく思っています。
手押しポンプ井戸は、電気が止まっても手動で生活用水が確保できるのでとても大事な設備だと思います。生徒にも避難訓練を通して使い方、水のありがたみを伝えていきたいと思います。
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相愛50周年事業としてボランティアで取り組んできた手押しポンプ井戸の設置は、東日本大震災を経て、南海大地震に備えたライフラインとしての重要性を増し、ますますその設置意義が高まってきています。
補修メンテナンスだけでなく、新たな井戸の増設などもご要望がありましたら、ぜひご相談いただければと思います。
おまけ:猛暑日が続きます。清涼な井戸水の風景でご一服ください。