0047 地すべり対策!集水井戸への排水ボーリング

2015.08.28

カテゴリー: 活動報告
タグ: 建設工事

光陰矢の如し。

ふと気づくと前回の更新からずいぶん日にちが経ってしまいました。

全国110名(フェイスブックのいいねの数、2015年8月28日現在)の相愛ファンの皆様お待たせしました。久々のお仕事紹介ブログ更新です。

 

今回は相愛が創業初期から取り組んでいる地すべり対策工事、排水ボーリングについてレポートします。

 

現在標準的に使われているロータリー式ボーリングマシンを相愛が県内初導入したのが昭和35年。

以前からあった打ち込み式のパーカッションボーリングでは縦にしか穴が掘れないのですが、地すべり対策工事では、横穴ボーリングで地下水の排水を行う必要があります。

当時最先端の機械で値も張ったと思われますが、有数の地すべり地域を抱える高知県では必須の対策工事だと考え、導入に至りました。

県内初導入のローターリー式ボーリングマシン

 

今回の現場は、高知県越知町谷の内地区。

地すべりの歴史はとても古く、地すべり対策防止区域に指定されたのが昭和33年。

相愛の創業が昭和31年、ローターリー式の導入が35年ですから、ほとんど創業当初からお付き合いしている地域、といっても過言ではありません。

地域の入口にある地すべり防止区域の看板。

 

谷の内地区では以後も昭和50年、51年の台風豪雨により大規模な地すべりが起き、道路、橋、民家等が大きく崩壊。平成11年には幅450m、長さ1200mにもわたる地すべりが発生して民家が被災するなど、長きに渡り地すべりに悩まされてきました。現在も地すべりブロックは活動中で、都合50年以上も対策工事が続けられています。

 

この工事の長期化の原因のひとつが、地すべり面の深さにあります。

谷の内の地すべり深度は平均で60m、最大で170mの深さ。

傾斜がゆるく地すべり面が深いため、横穴による排水ボーリンだけでは地下水面に届かせるのが困難で、各ポイントに集水井戸を縦に堀り、その底から横穴ボーリングを行って排水を行う施策が行われています。

 

また地すべり地帯も広大で、防止区域の面積は131.21ha

(東京ドーム約28コ分)にものぼります。そのため集水井戸も数多く必要になり、17基の建設が予定され、現在進行中であります。

ちなみに井戸で集めた水は水路に流し、農業用ほか生活雑俳水として利用されています。

集落の近くにある集水井戸。なかなかのスケールです。

 

今年相愛が担当させていただいているのは、10号集水井戸への排水ボーリング。

地下24mの幻想的な風景とともにご紹介しましょう。

100m先が現場。山の頂付近にあります。

その山の頂に突如現れたる10号集水井戸。深さ24m! 足がすくみます。

現場監督の北山。作業員の安全確保のため地界の酸素濃度をチェック。

今一度縦長の写真で地下世界。建物にして7回建てくらいの深さです。

恐る恐る覗き込むと、やってますやってます。排水横穴ボーリング!

 

今回は最下部から3.2mの地点を傾斜角度5度で70m掘り進みます。

この井戸からは最終的に19本のボーリングが行われる予定ですが、相愛が担当させていただいているのはNo.13~15の3本。

掘削のスピードは、それぞれ掘り進めるうちに出くわす土質や地下水の量に大きく左右されます。

作業中に撮影した写真。水がじゃぶじゃぶ湧いてきます。

 

地下24mで作業を行うスタッフは3名。1人がマシンを操作し、残りの2人がケーシングパイプの受け渡しを行います(掘削の手順に関しては以前の記事「地質を探るボーリング調査」をぜひご参照あれ)。

 

これと合わせて掘り出される土や出てくる水の処理を行わなければなりません。この日掘削しているNo.14の孔は土が崩れやすく毎分150Lの水が流出し、作業が難航していました。

掘り出した土が大量になったため、掘削を中断して土を出します。

土質をチェックする北山。現在井戸から24mの地点。もろい泥岩でした。

 

スタッフのお昼休みに井戸の最深部まで行ってきました。

入ります!

地上が遠ざかり、空気がひんやりしてきました。

工事現場マニアの方にはこたえられないヘビーメタル感。

見上げれば外遠し。SFチックです。

重厚なボーリングマシーン。地下世界をもくもくと掘削します。

写真中央が現在掘削中のNo.14のボーリング孔。

流れ出る地下水の水量をチェックします。

 

改めて調査した結果、他の孔は多くても毎秒16L程度でしたので、今回の孔の水量が桁違いに多いのが分かりました。難航するわけです。

来た道は戻らねばなりません。この上がり下がりだけでも一苦労です。

 

地下世界は地上よりも涼しく気温の面では快適ですが、いかんせん狭くて身動きが取りずらい環境。

さらに、ボーリング中はマシンの音が反響してうるさく、耳栓なしでは耐えられないといいますから、かなり過酷な状況。

安全面には十二分に配慮して作業を行ってまいりたいと思います。

仮設事務所には、熱中症対策グッズも完備。ゼロ災害を目指します!

 

いかがでしたか、谷の内地区の地すべり対策排水ボーリング工事。

相愛でも創業初期からのお付き合いのため、現場への行き帰りに地域の方から親しげに声をかけられます。なんでも井戸の少なかった昔、水は非常に貴重な存在であったため、ボーリングを行うたびにとても喜ばれたのだそうです。

以前は地域のお祭りや神祭にも呼ばれ、社員も総出で駆けつけ親睦を深めてきたといいます。

日本でも有数の地すべり地帯を抱える高知県。

その地に根ざす地質調査会社として、相愛では各地の地すべり対策に尽力し続けていきたいと思います。

越知町谷の内、晴れた日はぽっかりと雲が浮かぶ、おだやかな地域です。