0029 液状化防止! 丸太杭を打ち込んだ改良地盤調査

2014.07.22

カテゴリー: 活動報告
タグ: 地質調査

東日本大震災で千葉県などの湾岸地域が液状化の被害を受けたことは記憶に新しいと思います。

 

液状化とは、水分を多く含む砂層など軟らかい地盤が地震などの激しい揺れで液体のように動き出す現象で、最悪上に立っている建造物が傾いたり、倒れたりする原因となります。

特に人工的な埋め立て地は液状化がおきやすいと言われています。

 

この液状化を防止するため、これまでは、地中に砂を入れて固める工法が一般的でしたが、近年、高知大学の原忠教授を中心としたグループが研究を重ね、木材を地面に打ち込み、地盤を締め固める新技術が開発されています。

 

県外では実用化も始まっているこの新技術、森林県・高知においても導入を目指しており、5月に県内初の工事が施工されました。

相愛はこのプロジェクトに、地盤調査の分野で参画。

実際に施工現場の地盤がどう変化したのか、施工前、後の調査を行います。

巨大な鉛筆のような丸太杭。直径15cm×長さが4m。2本つないで打ち込みます。

打ち込み時の様子。この敷地内に300本が打ち込まれました。

 

今回の取材は、打設工事施工後の各種調査。

当日は、間隙水圧計観測孔の設置、スウェーデン式サウンディング試験、トリプルサンプラーによる不攪乱試料の採取が行われました。

この地面に長さ8mの杭が45㎝間隔で打ち込まれています。

手前の2人がスウェーデン、次が不攪乱試料採取、左奥が間隙水圧計観測孔の設置。

 

間隙水圧(地中の液体はすべて間隙水と表現されます)の観測は、土中の水圧を調査するもの。

今回は8mと5mの地点で2孔ずつ計測します。

間隙水圧計を設置する孔をボーリングする2人。

 

スウェーデン式サウンディング試験は、重りを付けたスクリューを地中に貫入し、土の固さや軟らかさ、地面の締まり具合などを計る方法。今回は5か所を調査します。

スウェーデン式サウンディング試験に専心する2人。

 

そして、今回詳しくご紹介するのが不攪乱(乱さない)試料の採取。

今回、現場の土質は細かい砂層なので、試料の採取には細心の注意をはらい、地中の状態のままサンプリングし、移送して土質試験にかける必要があります。

サンプリングした試料は三軸圧縮試験を行い、土の強度を調べます。

試料の採取に使うトリプルサンプラーのライナー。

この透明な筒に試料が入ります。

ライナーを慎重にトリプルサンプラーに挿入。

先端に掘削を行うビットを装着して、ボーリングマシンに装着、地中に入れて行きます。この日は10m~10.9m、11m~11.9m地点の2本の試料採取を行いました。

 

トリプルサンプラーはその名の通り、管が3重になったサンプラー。

一番外側の管が回転しながら地中を掘り進み、その内側の固定された筒の中に装着した透明なライナーに試料を取り込んでいく仕組みです。

取材当日はうだるような暑さ!

暑さにめげず、この道40年以上のベテランスタッフが荷重、回転数、水量などを見ながら慎重に慎重に挿入していきます。

添えたこの手でボーリングマシンの振動を感知し、地中の掘削状況を判断します。

このような不攪乱試料の採取の場合、ひとつのサンプルを取るのにかかる時間は大体1時間程度、その間、慎重に慎重を重ねた作業が続きます。

試料が入ってきました。手ごたえありの様です。

試料を乱さないように慎重に寝かします。

サンプリングしたての試料を慎重に観察します。

溶かしたロウを流し込んで試料が乱れないよう蓋をします。

固まったら反対側もロウで蓋をします。

こんな感じでロウで蓋をします。

 

ロウで固めた試料は、相愛土質試験室で脱水を行い冷凍保存。

その後高知大学の原忠教授の土質試験室に移送して試料を切り出して三軸圧縮試験を行い、土自体の強度や液状化抵抗を求めます。

 

今回の試験結果としては、液状化抵抗が強くなっていることがわかり、丸太杭工法が、液状化対策に有効な工法だということが実証されました。

 

間伐材の有効利用にもつながる丸太杭による液状化防止工法、森林率84%の森林県・高知においては、さまざまなメリットが見込める有効な工法のひとつと言えます。

相愛では、今回のような実証実験への参画を通して、さまざまな新技術・新工法の開発に協力していきたいと考えています。

いろいろな試験が一度に見られる地質調査のデパートのような現場でした。