0028 アンカーアセットマネジメント研究会総会

2014.07.03

カテゴリー: 活動報告

先々月の事になりますが5月29日~30日にかけて、相愛も所属しているアンカーアセットマネジメント研究会の総会が高知で開催されました。

 

29日には「現地検討会」として、相愛敷地内にて実際にSAAM(サーム)ジャッキを使っての勉強会が開催され、研究会のメンバー他合わせて約30名が参加しました。

開会の挨拶を行う三重大学大学院・酒井俊典教授。

相愛と一緒にSAAMジャッキを開発された方です。

 

この日行われた最初の試験は、「余長なしゲビンデスターブのリフトオフ試験」。

 

岩盤に固定されたグラウンドアンカーが適切な緊張力を保っているか否かは、通常ゲビンデスターブ(アンカー鋼材)のネジを使ってリフトオフ(引っ張り)試験を行うことで計るのですが、今回はネジ部分の短いアンカーにも対応できる技術が紹介されました。

本日の実験用アンカー。パイプの中をアンカー鋼材が通っています。

向かって左側を固定し、右側にジャッキを付けてリフトオフ試験を行います。

余長の短いゲビンデスターブ。

このような場合は六角形の定着ナットの部分も利用してリフトオフ試験を行います。

外枠(インナーカップラー)をはめ込み、新たに研究開発したクサビ型のアタッチメントでナットをつかみます。

アタッチメント装着。

さらに外枠(アウターカップラー)をセットして、リフトオフで引っ張る部分を

長く作ります。

あとはSAAMジャッキを取り付けて、通常通りリフトオフ試験を行うだけ。

あらためてリフトオフ試験で表示されるデータの説明なども行いました。

 

開発した、この余長が短いアンカーを試験するためのアタッチメントは、SAAM-Aと名付けられ、現在特許出願中です。

 

さらに、余長の短いアンカーを含めほとんどの既設アンカーに荷重計が設置できるシステムを開発。取り付け後の作動確認や精度確認ができる仕様で、こちらは特許を取得いたしました。

名称はSAAM-Lです。

オレンジ色の部分が荷重計。SAAMジャッキで引っ張って動作確認を行い、データの確認を行った後設置します。

パソコンに搭載した専用ソフトに表れる荷重データの状況なども確認しました。

アンカーヘッドがさびないようにキャプを付けて、荷重計の設置完了。

必要なときにすぐ荷重のモニタリングができる安心のアンカー維持管理システムです。

 

続いて行われたのが、リフトオフ試験中の安全対策。

実際に60トンの緊張力のかかったアンカーを切断して、どのような現象が起きるのかを確認しました。

バーナーでアンカーを焼き切ります。

ガシャーンという大きな音とともに、飛び出したアンカー。

5mほど飛び出しました。

 

実際のグラウンドアンカーでの破断は、法面内部の山の動きに連動することが多いので、今回のように一瞬にして緊張力が抜け飛び出すことはレアケースだと考えられますが、鋼材の劣化などあらゆる可能性に備えておく必要はあります。

 

実際のリフトオフ試験で取るべき対策についても試験を行いました。

2トンの荷重に耐えられるロープでアンカーを固定して先ほどと同様にアンカーを焼き切ります。

60トンの緊張力のかかったアンカーの飛び出しが、耐荷重量2トンのロープでしっかりと止まりました。

 

これは、アンカーが切れる際のコンマ何秒の間に、緊張力の急激な低下が起こるためとのこと。

実際の現場では防爆シートを被せて試験を行いますので、さらに安全性は高まります。

 

もうひとつ、より線タイプのアンカー切断試験も行いました。

7本の線をより合わせたアンカーが3本あるタイプ。

1本ずつ切れて緊張力が抜けていくので、飛び出しませんでした。

ただ、酒井先生教授によると状態によっては飛び出す場合もあるので、最悪の状況を想定して作業にあたる必要があるとのことでした。

 

現在、会員企業10社で構成されているアンカーアセットマネジメント研究会では、それぞれの企業が、全国各地で行うグラウンドアンカーのリフトオフ試験で培ったノウハウや問題点を共有し、問題解決のための改善研究を行っています。

 

そのいくつかは、今回の勉強会で披露されたように新技術として特許となったり、現場の安全対策にいかされていきます。

 

日本の大動脈である高速道路の法面安定をはかるため多数打設されたグラウンドアンカーの健全性を診断する新技術・小型で軽量なSAAMジャッキによる緊張力調査。

これからも相愛はじめアンカーアセットマネジメント研究会一丸となって取り組んでいきたいと思います。

翌日は座学。事例紹介、研究発表などが行われました。