0071 相愛の自然環境調査

2017.09.22

カテゴリー: 活動報告

循環型社会の実現をめざす弊社相愛。

昨年は高知県環境活動支援センター・えこらぼの運営を受託するなど、環境系の業務に力を入れて取り組みを進めてきました。

さらに本年度は、自然環境調査のエキスパートをスタッフに迎え、環境調査の専門部門・自然環境調査課を立ち上げ、取り組みを本格化しています。

今回のお仕事紹介ブログは、動き出した相愛の自然環境調査活動について7月に行われた第1回目の相愛社屋近辺の湿地・生物調査を中心に詳しくご紹介していきます。

まずは、2017年4月に入社した自然環境調査のエキスパート高橋職員のご紹介。

自然環境調査課・高橋弘明

 

高知大学理学部生物学科で魚類分類学、生態学を専門に学び、卒業後は民間研究所で四国四県のレッドデータブックの策定・執筆などに携わった経歴。

環境系の著書も多く、特に淡水魚の地理的分布、生態調査、希少種の保全・保護対策検討を専門として、現在も県内外の自然環境調査に大忙しの日々を送ります。

最近の研究テーマはドジョウ。今年発刊された『特盛ドジョウ本』にも執筆を行いマニアを唸らせています。

この日の調査は、社屋内にある通称・社内湿地、入口付近にある南湿地、裏山にある北湿地の3ヶ所を調査。どういう生物が生息し、それが月日の経過とともにどのように変遷するのかを調べ、この地域の生物・環境の状況を推し量るための調査です。

相愛が平成16年から取り組んでいるエコアクション21とも連携した活動として、7月、9月、11月に実地調査を行い、結果を12月の土佐生物学会で発表予定。

高橋の指導の元、専門的な手法を取り入れて調査に望みます。

左からエコアクション21のメンバーである建設事業部・近藤、木質バイオマス事業課・松岡、地域振興課・森近。

専門的な環境調査手法を学び、エコアクションの取り組みも、従来の省エネ、ゴミの減量から一歩進んだものにしていく目論見です。

生物を採集する網の使い方について、厳しく指導を受ける面々。

さっそく現地にレッツゴー!

やって来ました。まず社内湿地です。

ここは、以前から水が沸いていた地点で、調査のために5月中旬に土を堀りそれ以降水が溜まってきています。まだ出来立てほやほやの湿地ですね。

まずは水温を計ります。18.2度でした。日当たりが悪いからか低めのようです。

突入! 入ってみると中の水温はもっと低いようでした。

3人が網で採り、1人が容器に受け取ります。

水生生物探しに没入するメンバー。元々素養がありそうです。

ユスリカの幼虫がいました。

ヤマアカガエルは近藤が「目があった」と捕獲。

サワガニさんもご生息。

一同かぶりつき。社内湿地からは、その他ミズムシ・アメンボ・ゲンゴロウ科・トンボの幼虫(ヤゴ)などが見つかりました。

1ヶ所目を終え、次なるポイント南湿地に向かいます。

南湿地、農業用の溜池として利用されてきたようです。水温24.1度、暖かめです。

さっそく何かを発見した高橋隊長。

マユタテアカネというトンボです。

突入!

見えづらいですがマツモムシをゲット。刺されると痛いのだそうです。たくさんいました。

珍しい水草もゲット。

トンボのヤゴ、ゲット。

おたまじゃくしゲット。マツモムシもいますね。

ミズカマキリ、アカハライモリなど、社内湿地とくらべて生物がたくさん生息していることがわかります。次々ゲット。

ツチガエルさんもおりました。

その他、南湿地ではトンボのヤゴ・成虫各種、ミズムシ・ゲンゴロウ科・ガムシの幼虫などが見つかりました。

最終ポイント・北湿地に向かいます。周りからはどういう人たちに見えたでしょうか?

北湿地到着。右下の森近が水温計測中。25.5度と暖かかったです。

突入! 一同もう慣れた手つきで採集を進めます。

アカハライモリちゃんゲット!

オタマジャクシたくさんゲット!

竹と同化していますが、近藤が貝(ヒラマキミズマイマイ)を発見!

「近藤さん、何かいます」。「足の生えたオタマジャクシやね」。

目が肥え、それぞれの採集網をじっと見いる面々。

採集物を網からを白いバットにあけ、生物を探して容器に移し替えて保管します。

こちらにもツチガエルがいました。どうりでオタマジャクシが多いはずです。

北湿地では、その他、ヤンマ科のヤゴ、ゲンゴロウ科の幼虫などがいっぱいいました。が、なんといってもオタマジャクシとイモリだらけの両生類天国でした。

トノサマガエルもおられました。

たくさんの収穫にご満悦の弊社・松岡。

さて、部屋に戻って、どんな生物がいたのか調べていきましょう。

ちなみに、自然環境調査課は以前工事部があった建家の1階に居を構えます。

中は高橋職員が撮影した県内の生物の写真などをたくさん掲示。

水槽では魚やエビがご生育中。近隣の小学生たちを呼んで環境学習会などが開けるよう、準備を進めています。

それでは午後から行われた生物を同定していく作業を引き続きレポートしてまいります。

まずは水草から。ひょっとして珍しい種類ではないかと高橋隊長が南湿地から採集してきました。

図鑑を紐解きながら、まさに枝葉末節を見比べます。

この植物は高知県で絶滅危惧種のイトモに似ていたのですが、少し成長してみないとわからない部分も多く、湿地を継続観察することにしました。

葉っぱを見つめて喧々諤々。

続いて水生生物の写真撮影のレクチャー。

後ろの青い板を敷いて、水槽の中央部分に来た頃に撮るのがベスト。

こんな感じっす(珍しくうまく撮れた一枚を誇らしげに掲載)。

ちなみに、ギンヤンマの幼虫ですな~。

様々な水生生物を見比べながらレクチャーを受ける面々。さらに目が肥えてきました。

ふだん目を向けることのない湿地ですが、いろいろな生命が育まれているのです。

と、あったかいコメントを残しつつも同定調査のため今日採取された皆様はホルマリンに漬けて仏様に…。

仏様になった水生生物たち。大切に調査させていただきます!

生物種を大まかな見た目、サイズで分類していきます。

顕微鏡で詳細に観察。

こんな感じで見えます。

特徴を探って、図鑑で確認。地道な作業を繰り返していきます。

違う本で、裏付け確認を行う近藤。寄る年波に老眼です。

この個体はエゾトンボのヤゴであることがわかりました。希少種です。

ちなみにヤゴは下アゴが伸びて、すくって小さな生物を食べます。素人さんにとっては新発見。

こちらはギンヤンマのヤゴ。頭目の形が特徴的です。

高知では去年まで準絶滅危惧種とされていました。

ガムシに挑む松岡。ゲンゴロウ科と違って泳がないガムシは、動きも地味で人気がなく、研究者も少なく、よって図鑑・文献も少ないのだそうです。同定にも一苦労。

「模様の感じから、これじゃないっすかね~?」

「同じ模様のガムシが、何十種類といるよ」。

 

高橋

「魚が約3000種なのに対して、昆虫は何十万種もいます。それぞれの専門性が高く、チョウの研究者がトンボを知らない、ということもよくあります」。

高橋隊長を囲んで和気あいあいと同定講座。皆初めての経験で、一気に目が肥えました。

この日、同定が進まなかったものは保存して、後日高橋がじっくりと調査していくことに。

9月21日現在同定作業も終わり、社内湿地で12種、南湿地で25種、北湿地で21種の生物が確認されています。

 

第一回調査を終えて高橋の総評

「最初の社内湿地は、作って2ヶ月目とあって、まだまだ生物が少ないですね。日が当たりづらく水温が低いので、木を切って日光当てるなど、環境を整えて生物を呼び込みたいと思います。

南湿地は、水温も上がるあったかい湿地。トンボが多数とびかっているポイントなので、やはりヤゴが多かったですね。水草も豊富に生えていました。アカハライモリもたくさんいました。生物種豊かなビオトープと言えます。

北湿地も水温は高く、様々な生物がいました。特徴としては、アカハライモリ、オタマジャクシが豊富で両生類天国のような状況ですね。南も北も予想通り多様な生物がいましたが、ゲンゴロウ科がちょっと少ないのが意外でしたね。

自然環境調査はとても手間が掛かる地道な作業ですが、高知の自然環境の現状がよくわかるとても大切な活動です。

まだまだ調査されていないポイントは県内に多数ありますが、まず、我々は自分たちの敷地周辺の詳細なデータを積み上げ、この時期、この場所にどんな生物が暮らしていたのかということを後世に確実にデータして残していきたいと思います。

今後の継続調査、12月の土佐生物学会での報告を楽しみにしています」。

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第1回目の相愛社屋近辺の湿地・生物調査の模様いかがでしたでしょうか?

相愛では今後もさらにスタッフの拡充を行い、高知、四国の自然環境調査に乗り出していく所存です。

専門性を活かした自然環境調査業務は、相愛・自然環境調査課にぜひご用命ください。

また社内においては、今後も湿地の生物調査だけでなく、植生調査や植樹なども行って敷地内の自然環境を整備し、

小学生~高校生を対象に環境学習会などを積極的に企画していこうと考えています。

こちらも高橋をはじめ、この日研鑽を積んだエコアクション21の担当スタッフが、張り切って準備を始めていますので、

ご興味のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

「自然環境調査課、環境学習会ともども、よろしくお願いしま~す」。